工商登記事項が事実と合わない場合、その法的効力をどう認定するか?
工商登記は、商事登記であり、会社(パートナーシップ企業、個人独資企業又はその他組織形式、以下は、「会社」という)の法人格を創設、変更及び終止するために、法定内容とプロセスに従い、当事者が登記機関に対し登記事項を申請し、登記機関による審査、承認を経たうえ、登記事項を登記簿に記載する行政行為である。工商登記を実施する主たる目的の一つは、市場経済秩序の安定及び取引の安全を維持することである。会社が登記機関に登記した事項に変更が発生した場合、会社が当該変更事項の変更登記を行い、且つ公告しなければならない。登記しなければ、善意の第三者に対抗することができない。
しかしながら、実務上に会社が工商登記の要求通りに登記義務を履行しないことにより工商登記事項と事実状態と合わない状況は存在している。大拇指環保科技集団(福建)有限公司と中華環保科技集団有限公司との株主出資紛争案の裁定で、最高裁判所は、「法定代表者(日本の代表取締役に相当)の変更登記は、社会に会社の意思代表権の基本状態を公示するためである。法定代表者の登記は対外的に公示の効力を有する。会社以外の第三者との会社代表権に起因する外部争議の場合、工商登記に準ずるべきである。しかし、会社と株主との間の法定代表者の任命・解任に起因する内部争議の場合、有効的な株主総会の任免・解任決議に準ずるべきであり、かつ会社内部において法定代表者変更の法的効果が生じる。」との判断を下した。
【背景】
大拇指環保科技集団(福建)有限公司(以下は、「大拇指」という)は、シンガポールに登録した中華環保科技集団有限公司(以下は、「シンガポール本社」という)により中国に設立される外商独資企業であり、2000年6月30日に営業許可書を取得し、登録資本金は人民元1.3億元である。大拇指は、登録資本金が人民元3.8億元まで増資し、増資部分は2010年8月3日までに分割で払い込むことが批准されたにも関わらず、期限通りに払い込んでいない。
シンガポール本社は2001年にシンガポールに設立された有限株式上場会社である。2010年6月4日、シンガポール高等裁判所は同社の申請を受け、同社が司法管理手続きに入るとの裁定を下した。
2012年3月30日、シンガポール本社の司法管理人は書面決議及び任免状を発行し、何昱均を大拇指の董事長及び法定代表者の職務から免じ、保国武を大拇指の董事長及び法定代表者として委任し、Seshadri Ra- iagopalan、余明縁、何昱均の三人を大拇指の董事の職務から免じ、保国武、徐麗雯、宋寛の三人を大拇指の董事として委任し、任期はすべて3年である。しかし、大拇指の実際の支配者は公印の引継ぎを拒み、大拇指の董事会は株主の決議を執行せずに、且つ、2012年12月18日に大拇指の法定代表者を洪臻に変更登記したため、工商登記の法定代表者と株主の任命した法定代表者が不一致な状況となっていた。
2012年4月27日、大拇指は福州市中級人民裁判所(以下は、「福州中級裁判所」という)に起訴し、シンガポール本社が株主としての出資義務を履行し、増資金人民元4500万元を納付することを要求した。シンガポール本社は、唯一の株主として既に大拇指の法定代表者、董事を含む管理層を変更し、新しく委任した大拇指の法定代表者は法廷に対し訴訟を取り下げる意思表示を示したことを主張した。本件は、福建省高裁の二審を経て、最高裁まで争った。
(※別件として、2012年5月16日、シンガポール本社は大拇指と田垣、陳斌及び潘成土との紛争を福州中級裁判所に対し起訴し、シンガポール本社による大拇指の董事、監事、法定代表者を任免する決議が合法、有効であることを確認する訴訟請求を提出した。福州中級裁判所は、2013年9月17日に、シンガポール本社が2012年3月30日に発行した「書面決議」及び「任免状」が有効であることを確認し、大拇指は判決の発効日より10日以内に法定代表者、董事長、董事の変更及び届出手続を行い、大拇指の法定代表者、董事長を保国武に、董事を保国武、徐麗雯、宋寛の三人に変更しなければならないという一審判決を下した。)
【判決】
1、二審の裁判所が審理後、シンガポール本社が判決の発効日より10日以内に大拇指に出資金4500万元を支払わなければならないという判決を下した。
2、最高裁判所が審理後、二審判決を取り消し、大拇指の起訴を却下すると裁定した。
【争点】
1、大拇指が本件訴訟を提出する意思表示が真実であるかどうか、即ち、工商登記の法定代表者と株主の委任した法定代表者と、誰が大拇指の意思を代表できるか?
2、シンガポール本社が出資義務を履行すべきか?
【判決意見】二審裁判所及び最高裁判所による争点に対する意見
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二審裁判所
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最高裁判所
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大拇指が本件訴訟を提出する意思表示の真実性について
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中国法律を適用する前提の下に、工商登記の情報は公示公信の効力を有する。大拇指の法定代表者を認定する際に、工商登記に準じるべきであり、保国武が大拇指の法定代表者として登記されることを証明する証拠がない場合、彼が大拇指を代表して訴訟を取り下げる意思表示は法定効力がなく、認めない。
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法律が法定代表者を変更事項として登記しなければならないと定めた意義は、社会に対し会社の意思代表権の基本状態を公示することである。工商登記の法定代表者は、対外的に公示効力を備え、会社以外の第三者が会社の代表権による外部争議が発生した場合、工商登記に準じるべきであり、会社と株主との間に法定代表者の任免による内部争議が発生した場合、有効的な株主任免決議に準じ、且つ、会社の内部に法定代表者変更の法的効果を生じる。従って、シンガポール本社は大拇指の唯一の株主として、その大拇指の法定代表者を任免する決議は、大拇指に対して拘束力を有する。
本件を起訴する時点において、シンガポール本社はすでに大拇指の法定代表者を変更しており、かつ新たに任命した大拇指の法定代表者は本件起訴を明確に反対していた。従って、本件起訴は大拇指の真実な意思とは言えず、却下すべきである。
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シンガポール本社の出資義務の履行の必要性について
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シンガポール本社はシンガポール法人であり、中国国内において外商独資企業の大拇指を設立し、株主としての大拇指に対する出資は中国の法律を適用すべきである。シンガポール本社が株主として出資を払込む法定義務を自ら履行しないとともに、関連部門に対して減資申請を提出し、大拇指の法人財産権を侵害したため、大拇指はシンガポール本社に対し出資義務の履行、出資の補足を要求する権利を有する。
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二審判決を取り消す。大拇指の起訴は却下されるべきなので、シンガポール本社が出資義務を履行するかどうかについて、別途審理する必要がない。
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工商登记事项与事实状态不符,法律效力该如何认定?
工商登记是商事登记的一种,是指为了设立、变更和终止公司(合伙企业、个人独资企业或其他组织形式,以下统称为“公司”)人格,依照法定内容和程序,由当事人将登记事项向登记主管机关提出申请,经登记机关依法审查核准,将登记事项记载于登记簿的行政行为。实行工商登记的主要目的之一是在于维护市场经济秩序的稳定和交易的安全。当公司曾在登记机关登记的事项发生变化时,则要求公司必须将此等改变事项进行变更登记并予以公告,否则不能对抗善意第三人。
商事活动实务中存在由于公司未按照工商登记要求履行相应的登记义务而导致工商登记事项与事实状态不符的情况,在大拇指环保科技集团(福建)有限公司与中华环保科技集团有限公司股东出资纠纷一案的判决,最高人民法院认为对法定代表人变更事项进行登记,其意义在于向社会公示公司意志代表权的基本状态。工商登记的法定代表人对外具有公示效力,如果涉及公司以外的第三人因公司代表权而产生的外部争议,应以工商登记为准。而对于公司与股东之间因法定代表人任免产生的内部争议,则应以有效的股东会任免决议为准,并在公司内部产生法定代表人变更的法律效果。
【基本案情】
大拇指环保科技集团(福建)有限公司(以下简称“大拇指公司”)系由注册于新加坡的中华环保科技集团有限公司(以下简称“环保科技公司”)在中国设立的外商独资企业,于2000年6月30日取得营业执照,注册资本1.3亿元人民币。后大拇指公司经批准注册资本增至3.8亿元人民币,增资部分分期至2010年8月3日缴清,但未按时缴清。
环保科技公司于2001年在新加坡注册成立,公司类别为有限股份上市公司。2010年6月4日,新加坡高等法院作出法庭命令,应环保科技公司的申请,裁定环保科技公司进入司法管理程序。2012年3月30日,环保科技公司的司法管理人作出书面决议和任免书,免去何昱均大拇指公司董事长及法定代表人职务,委派保国武为大拇指公司董事长和法定代表人,免去Seshadri Ra- iagopalan、余明缘、何昱均三人的大拇指公司董事职务,委派保国武、徐丽雯、宋宽三人为大拇指公司董事,任期均为三年。但大拇指公司实际控制人拒不交出公章,且大拇指公司董事会未执行股东决议,并于2012年12月18日将大拇指公司的法定代表人变更登记为洪臻,造成了工商登记的法定代表人与股东任命的法定代表人不一致的情形。
大拇指公司于2012年4月27日向福州市中级人民法院(以下简称“福州中院”)起诉要求请求判令环保科技公司履行股东出资义务,缴付增资款4500万元人民币。环保科技公司表示,其作为唯一股东已经就大拇指公司包括法定代表人、董事在内的管理层进行更换,新任的大拇指公司“法定代表人”向法庭作出撤诉的意思表示。后本案经福建省高院(二审法院)二审,最终诉至最高院。
(2012年5月16日,环保科技公司在另行向福州中院起诉大拇指公司与田垣、陈斌和潘成土的纠纷中,提出了确认环保科技公司任免大拇指公司董事、监事、法定代表人的决议合法有效等诉讼请求。福州中院就该案于2013年9月17日作出判决:确认环保科技公司于 2012年3月30日作出的《书面决议》和《任免书》有效;大拇指公司应于判决生效之日起十日内办理法定代表人、董事长、董事的变更登记和备案手续,将大拇指公司的法定代表人、董事长变更为保国武,董事变更为保国武、徐丽雯、宋宽。)
【判决结果】
1、二审法院受理后,判决环保科技公司应于判决生效之日起十日内向大拇指公司缴纳出资款4500万元。
2、最高院受理后,裁定撤销二审法院的民事判决,驳回大拇指公司的起诉。
【争议焦点】
1、大拇指公司提起本案诉讼的意思表示是否真实,即工商登记的法定代表人与股东任命的法定代表人谁能代表大拇指公司的意志?
2、环保科技公司是否应当履行出资义务?
【法院意见】
二审法院及最高院对争议焦点的不同意见
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二审法院
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最高院
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大拇指公司提起本案诉讼的意思表示的真实性
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在适用中国法律的前提下,工商登记的信息具有公示公信的效力。认定大拇指公司的法定代表人仍应以工商登记为准,在无证据证明保国武被登记为大拇指公司的法定代表人前,其代表大拇指公司作出撤诉的意思表示不具有法律效力,故不予认可。
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法律规定对法定代表人变更事项进行登记,其意义在于向社会公示公司意志代表权的基本状态。工商登记的法定代表人对外具有公示效力,如果涉及公司以外的第三人因公司代表权而产生的外部争议,应以工商登记为准。而对于公司与股东之间因法定代表人任免产生的内部争议,则应以有效的股东会任免决议为准,并在公司内部产生法定代表人变更的法律效果。因此,环保科技公司作为大拇指公司的唯一股东,其作出的任命大拇指公司法定代表人的决议对大拇指公司具有拘束力。
本案起诉时,环保科技公司已经对大拇指公司的法定代表人进行了更换,其新任命的大拇指公司法定代表人明确表示反对大拇指公司提起本案诉讼。因此,本案起诉不能代表大拇指公司的真实意思,应予驳回。环保科技公司关于本案诉讼的提起并非大拇指公司真实意思的上诉理由成立。
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环保科技公司履行出资义务的必要性
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环保科技公司系新加坡法人,在中国境内设立外商独资企业大拇指公司,其作为股东对大拇指公司的出资应适用中国法律。环保科技公司不予主动履行股东足额缴纳出资的法定义务,反而向有关部门提出减资申请,侵害了大拇指公司的法人财产权,大拇指公司有权要求环保科技公司履行出资义务,补足出资。
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撤销二审判决。鉴于大拇指公司的起诉应予驳回,对于环保科技公司是否应当履行出资义务的问题,无需再行审理。
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